サロン経営において、CRMは顧客満足度の向上とリピート率の上昇に直結する重要な取り組みです。顧客の属性や来店履歴、ニーズなどのデータを一元管理・分析することで、顧客理解が深まります。それにより適切なアプローチが可能となり、顧客満足度が高まり、リピート率の向上が期待できるからです。ここでは、CRMについてと実践方法を詳しく見ていきましょう。
1.CRMとは
(1)顧客関係管理の意味
CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客関係管理と訳されます。企業が顧客との関係を構築・維持・発展させるための戦略や手法、さらにはそれを支援するシステムのことを指します。
(2)サロン経営におけるCRMの重要性
サロン経営においてもCRMは非常に重要な役割を果たします。以下の点で大きなメリットがあります。
メリット |
内容 |
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顧客理解の深化 |
顧客の属性や来店履歴、ニーズなどのデータを一元的に管理・分析することで、顧客理解が深まります。 |
顧客満足度の向上 |
顧客データに基づいたきめ細かい対応が可能になり、顧客満足度の向上につながります。 |
リピート率の上昇 |
適切なアプローチにより、顧客のリピート率が高まります。 |
このように、サロン経営においてCRMは顧客満足度の向上とリピート率の上昇に直結する重要な取り組みなのです。
2.CRMを導入するメリット
(1)新規顧客の獲得が容易になる
CRMシステムでは、これまでの顧客データが一元管理されています。そのため、顧客の属性や嗜好、サービス利用履歴などを詳細に把握することができます。こうした顧客データを活用することで、新規顧客の獲得が容易になります。
具体的には、以下のような施策が考えられます。
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既存顧客に似た属性の潜在顧客にアプローチ
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人気メニューの利用履歴のある顧客層への新メニュー告知
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一定期間来店されていない顧客への再開勧奨キャンペーン
施策 |
具体例 |
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潜在顧客開拓 |
20代女性会員が多数いる場合、同年代の未会員へのDMなど |
新サービス告知 |
フェイシャル史上人気の顧客へ新フェイシャルメニューのご案内 |
再来勧奨 |
半年以上来店のない顧客へのお得なクーポン配布 |
このように、CRMで得られるデータを基に、ターゲットを絞った新規顧客獲得施策を展開することができます。リピーター顧客と同様の属性を持つ新規顧客を発掘しやすくなり、効果的な集客につながります。
(2)顧客満足度の向上につながる
CRMシステムを活用することで、顧客満足度の向上につながります。具体的には次の3点が挙げられます。
-
顧客ニーズに合わせたきめ細かい対応が可能
これまでの来店履歴や過去の施術内容、顧客の趣味嗜好などの情報を一元的に管理できるため、顧客一人ひとりに合わせたサービスを提供することができます。
-
スムーズな対応で待ち時間を減少
過去の履歴を参照しながらスムーズに対応できるので、顧客の待ち時間が減り、ストレスなく快適に施術を受けられます。
-
顧客とのコミュニケーションが円滑に
メール配信機能などを使えば、顧客に合わせたきめ細かい情報発信ができます。また、アンケート機能で顧客の声を把握しやすくなり、サービス改善に活かせます。
このように、顧客ひとりひとりのニーズに合わせた対応が可能になり、満足度が高まります。CRMを活用して、リピート率の向上やファン顧客の獲得につなげられるのです。
(3)顧客データの一元管理が可能
CRMシステムを導入することで、従来はExcelやメモ帳などに分散していた顧客データを一つのシステム上で一元管理できるようになります。これにより、顧客情報の検索や活用が容易になり、業務の効率化が図れます。
例えば、顧客の次回来店予定日や過去の施術履歴、支払い情報などをCRMに集約しておけば、いつでも簡単に参照できます。顧客への対応も、担当者が変わってもスムーズに引き継げます。
一元管理のメリット |
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・顧客情報の検索が容易 |
・顧客への対応がスムーズ |
・業務効率の向上 |
・重複データの排除 |
さらに、顧客データの分析も行えます。例えば、「リピート率の高い顧客層はどの属性か」といった分析を行い、マーケティング施策の立案に役立てられます。このように、CRMは顧客データの一元管理を実現し、サロン経営の効率化や売上アップに大きく貢献します。
3.サロン向けCRMの機能
(1)予約管理機能
サロン向けCRMには、予約管理機能が備わっています。この機能を活用することで、効率的な予約管理が可能になります。具体的には以下のような特徴があります。
-
Web上から顧客自身が予約可能
-
予約状況の一覧表示
-
予約時の希望メニューや担当スタッフの指定
-
予約変更や取り消しの通知機能
機能 |
内容 |
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Web予約 |
顧客がオンラインで簡単に予約可能 |
スケジュール管理 |
予約状況を一覧で確認できる |
オプション指定 |
希望メニューやスタッフを事前に指定可能 |
通知機能 |
変更や取り消しをメール・SMS等で通知 |
このように、Web上で予約が行えるため、顧客の利便性が大幅に向上します。また、スタッフ側も予約状況を一元的に管理でき、ダブルブッキングのリスクを軽減できます。さらに予約時のオプション指定が可能なため、顧客ニーズに合わせたきめ細かい対応ができるのがメリットです。
(2)顧客管理機能
サロン向けCRMには、顧客の基本情報や来店履歴、施術内容などを一元的に管理できる顧客管理機能が搭載されています。この機能を活用することで、次のようなメリットが期待できます。
-
顧客一人ひとりの属性や嗜好を把握できる
-
顧客のライフサイクルに合わせた適切な対応が可能
-
顧客データを分析し、ターゲティングされたアプローチが実施できる
具体的には、顧客の以下のような情報を登録・管理できます。
情報項目 |
内容例 |
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基本情報 |
氏名、性別、年齢、住所、職業など |
来店情報 |
来店日、施術内容、支払い金額、次回予約日など |
嗜好情報 |
好みのスタイル、メニュー、スタッフなど |
連絡情報 |
メールアドレス、電話番号など |
このように、顧客一人ひとりの詳細な情報が蓄積されることで、適切なサービスの提案やきめ細かいフォローが可能になります。顧客満足度の向上と共に、リピート率のアップにも大きく寄与します。
(3)マーケティング機能
サロン向けCRMにはマーケティング機能も搭載されています。この機能を活用することで、効果的なプロモーション活動が可能になります。
具体的には、以下のような機能があります。
機能 |
内容 |
---|---|
メール配信 |
顧客データベースから条件に合う顧客を抽出し、メールマガジンやDM、キャンペーン告知などを一括送信できます。 |
SNS連携 |
Facebookやインスタグラムなどの公式アカウントと連携し、投稿の自動化や効果測定が行えます。 |
キャンペーン管理 |
割引クーポンの発行や、ポイントプログラムの運用など、様々なキャンペーンを管理できます。 |
マーケティング施策の効果は、顧客データと連動した分析機能で測定できるため、PDCAサイクルを回しながら、より効果的な施策を立案することができます。
リピート顧客の獲得や売上アップにつなげるには、マーケティング機能を最大限活用することが重要になってきます。
(4)コミュニケーション機能
サロン経営においてCRMのコミュニケーション機能は非常に重要です。この機能を活用することで、顧客一人ひとりとの適切なコミュニケーションが可能になります。
具体的には以下のような特徴があります。
-
メール配信機能
-
顧客属性に応じたセグメント分けを行い、ターゲットに合わせたメール配信ができます。
-
-
SNSとの連携機能
-
公式SNSアカウントと連携し、投稿の一元管理や分析が行えます。
-
-
チャット機能
-
ウェブサイトにチャット機能を設置し、顧客とのコミュニケーションを円滑化できます。
-
機能 |
内容 |
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メール配信 |
セグメント分けに基づくターゲティングメール配信が可能 |
SNS連携 |
公式SNSアカウントの一元管理と分析が可能 |
チャット |
ウェブサイトにチャット機能を設置できる |
このように、CRMのコミュニケーション機能を活用することで、顧客一人ひとりとのコミュニケーションを密にすることができ、満足度の向上やリピート率のアップにつながります。
4.CRM導入の際の選び方
(1)必要な機能を搭載しているか
サロン経営に適したCRMソフトウェアを選ぶためには、自社のニーズに合わせて必要な機能が搭載されているかを確認する必要があります。一般的に求められる主な機能は以下の通りです。
機能 |
概要 |
---|---|
予約管理 |
顧客の来店予約を一元管理できる |
顧客管理 |
顧客の属性や来店履歴などのデータを管理 |
マーケティング |
顧客セグメント分けやメール配信機能など |
コミュニケーション |
顧客との連絡手段を一本化する機能 |
これらの基本機能に加えて、サロン独自の運用に合わせて、スタッフ管理やレポート作成機能なども検討すると良いでしょう。
機能の有無だけでなく、操作性や拡張性なども重要です。実際に操作を試したり、サポート体制を確認するなどして、自社に最適なCRMソフトウェアを選びましょう。
(2)サポート体制が整っているか
サロン向けCRMシステムを選ぶ上で、サポート体制が整っているかどうかは重要なポイントです。システムの導入時だけでなく、運用していく中で様々な質問や課題が出てくるでしょう。
そういった際に、迅速で丁寧なサポートが受けられるかどうかで、CRMの効果的な活用に大きな影響があります。具体的には以下のようなサポート体制があると良いでしょう。
サポート項目 |
内容 |
---|---|
サポート時間 |
営業時間内はもちろん、休日や夜間の対応もあると安心 |
サポート方法 |
メール/チャット/電話など複数の連絡手段を用意 |
サポート内容 |
操作方法の質問から障害対応まで、幅広い範囲で対応 |
サポート品質 |
スピーディーかつ、わかりやすい回答を心がける |
また、FAQ(よくある質問集)やマニュアル、動画解説などの技術情報があると、自力で課題解決できる場面も多くなります。サポート体制の有無は、CRMシステムを長期にわたり活用する上で、非常に重要な要素となるのです。
(3)費用対効果が見込めるか
CRMシステムの導入には一定の初期費用と運用費用がかかります。そのため、導入に際しては費用対効果を十分に検討する必要があります。
まず、導入費用に関してですが、CRMベンダーによって大きく異なります。主な費用項目としては以下のようなものが挙げられます。
費用項目 |
説明 |
---|---|
初期導入費用 |
サーバー環境の構築や初期設定などにかかる費用 |
ライセンス料 |
使用権の費用(従量課金やユーザー数に応じた課金形態が一般的) |
カスタマイズ費用 |
業種や業務に合わせたシステムのカスタマイズ費用 |
運用保守費用 |
システムの維持管理、アップデート費用 |
一方、CRMを導入することで見込める主なメリットとしては、業務効率化による人件費削減、リピート顧客の増加、マーケティング費用の最適化などが挙げられます。これらを総合的に勘案し、投資対効果を検証することが重要です。
5.CRMの実践ステップ
(1)顧客データの収集・入力
CRMの基本は、まず顧客データを収集・入力することから始まります。これは、顧客一人ひとりの詳細情報を把握し、適切な顧客管理が行えるようにするための重要な作業です。
収集が必要な顧客データの例は以下の通りです。
項目 |
内容 |
---|---|
基本情報 |
氏名、年齢、住所、電話番号、メールアドレス |
来店履歴 |
初回来店日、直近の来店日、来店頻度 |
購買履歴 |
過去の購入商品・サービス、支払い金額 |
嗜好情報 |
好みの商品・サービス、関心のあるジャンル |
このように、顧客一人ひとりについてできるだけ多くのデータを収集・入力することが望ましいです。システムへの入力は、スタッフが手作業で行うか、システムに顧客自身が入力するなどの方法があります。
顧客データはシステム上で一元管理されるため、いつでも最新の情報を確認できるようになります。また、これらのデータを分析することで、顧客の嗜好やニーズを把握し、適切な施策を立案することが可能になるのです。
(2)顧客セグメント分けと分析
収集した顧客データを活用するには、顧客をセグメント分けして分析することが重要です。顧客の属性や行動パターンなどに基づいて、以下のような基準で分類します。
セグメント分け基準 |
具体例 |
---|---|
人口統計的属性 |
年齢、性別、居住地域 |
購買行動 |
来店頻度、支払い金額、サービス利用状況 |
心理的属性 |
価値観、ニーズ、ライフスタイル |
例えば、20代女性のリピーターと、40代男性の新規顧客では、ニーズや関心事が異なります。セグメント分けによって、それぞれの顧客層に合わせたアプローチが可能になります。
分析では、各セグメントの顧客数や売上構成比、リピート率などを把握します。そのうえで、重点的に対策すべきセグメントを見極めることができます。また、セグメント別の顧客満足度調査も有用です。こうした分析結果を踏まえて、施策の立案や改善につなげていきます。
(3)ターゲットに合わせた施策実行
顧客データの分析を経て、ターゲットを決めたら次は具体的な施策を実行する段階です。例えば、以下のようなターゲットに応じた施策が考えられます。
ターゲット |
施策例 |
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新規顧客 |
・サロン見学会の開催 |
リピーター顧客 |
・メールマガジンによる施術メニューの紹介 |
長期未来店顧客 |
・電話やメールによる再来店勧誘 |
ターゲットに合わせて施策を変えることで、効果的なアプローチが可能になります。また、施策の成果をCRMに蓄積していけば、次の施策の立案にも生かせます。このように、CRMを活用することで、PDCAサイクルを確立し、サロン経営を円滑に進められるのです。
6.まとめ
サロン経営においてCRMを導入することは、リピート率の向上に大きく寄与します。CRMを活用することで、顧客データの一元管理が可能になり、適切な分析に基づいたマーケティング施策が実行できるようになります。
CRMの導入メリットを改めてまとめると以下の通りです。
メリット |
内容 |
---|---|
新規顧客獲得 |
ターゲットに合わせた効果的な営業活動が可能 |
顧客満足度向上 |
顧客ニーズに合わせた最適なサービス提供が可能 |
業務効率化 |
顧客データの一元管理で業務が効率化 |
導入に際しては、サロンの規模や用途に合わせてCRMツールを慎重に選定する必要があります。導入後は、PDCAサイクルを回しながら、継続的に顧客データの収集・分析・施策実行を行うことが重要です。
このようにCRMは、効果的な顧客管理を可能にし、顧客満足度の向上とリピート率アップに寄与する有用なツールです。サロン経営に欠かせない存在と言えるでしょう。
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