サロン開業の一番の難関である物件選び。そのコツと失敗しない立地の見極め方を解説します。
1.サロン開業を成功に導く大切な第一歩
サロン開業を成功に導くには、最初の一歩が極めて重要です。それは、物件選びと立地の検討です。適切な物件を選び、集客に有利な立地を見極めることができれば、開業後の軌道に乗せやすくなります。
物件選び・立地検討の重要性 |
---|
・顧客獲得の鍵となる |
・開業費用に大きく影響 |
・サロンのイメージ形成に関わる |
物件選びと立地検討を怠れば、以下のようなリスクが生じます。
-
ターゲット客層に合わない立地のため集客が振るわない
-
賃料が高すぎて経営が圧迫される
-
設備が古く、改装費用がかさむ
このように、サロン開業の成否は、物件選びと立地検討の段階で大きく左右されます。したがって、この部分を慎重に検討することが、サロン開業を成功に導く大切な第一歩なのです。
2.サロンのコンセプトを明確化する
ターゲット客層を設定
サロンの開業に際してまず重要なのが、ターゲット客層の設定です。ターゲット客層によって、立地や内装、サービス内容などが大きく変わってきます。
例えば、以下のように層別化できます。
ターゲット層 |
特徴 |
---|---|
20〜30代ビジネスパーソン |
立地は駅近が望ましい。価格は中高価格帯。高級感のある内装が好まれる。 |
30〜40代ママさん層 |
住宅街が立地に適する。価格は中価格帯。子連れでも入りやすい作りが求められる。 |
50代以上の年配層 |
駐車場があると好まれる。価格は低中価格帯。落ち着いた雰囲気の内装が人気。 |
このように、ターゲット客層を明確にすることで、物件選びからサービス内容までを適切に設計することができます。開業時の重要なポイントとなりますので、十分に検討しましょう。
サロンの雰囲気やサービス内容を決める
サロン開業に際し、ターゲット客層に合わせてサロンのコンセプトやサービス内容を明確化することが重要です。サービスメニューやプライス設定、内装のイメージなど、具体的に決めていく必要があります。
例えば、以下の項目について検討しましょう。
カテゴリー |
内容例 |
---|---|
サービスメニュー |
カット・カラー・パーマ・エステ等 |
価格設定 |
顧客ターゲット層に応じた適正価格 |
内装デザイン |
高級感・カジュアル・モダンなど |
設備・備品 |
椅子・ドライヤー・シャンプー台など |
サービスの質 |
技術レベル・サービス水準の設定 |
これらの要素を組み合わせて、サロンのコンセプトや雰囲気をしっかりイメージしましょう。顧客ターゲットに合わせた魅力的な価値提供ができるよう、サービス内容を具体化することが大切です。
価格設定とコストバランスを考える
サロンの価格設定は、集客力に直結する重要な要素です。ターゲット客層の支払い可能金額を把握し、地域の相場と比較しながら適正価格を設定しましょう。
一方で、サロン運営には以下のようなコストがかかります。
コスト項目 |
概算金額(月額) |
---|---|
家賃・共益費 |
20万円〜60万円 |
人件費 |
25万円〜50万円 |
広告宣伝費 |
5万円〜15万円 |
消耗品費・備品leaseなど |
5万円〜20万円 |
価格設定時には、これらの固定費とサービス原価を勘案し、利益が出る水準に設定する必要があります。また、キャンペーンなどで初期費用がかさむ場合もあり、事前の資金計画が欠かせません。
サロン経営は長い目で見る必要があり、コストバランスを見極めた上で価格を決めることが成功への第一歩となります。
3.立地の重要性を理解する
人通りや集客力に大きく影響
サロンの立地は集客力に大きく影響します。駅前の繁華街や商店街は人通りが多く集客に有利ですが、賃料が高額になる傾向にあります。一方、住宅街は賃料は抑えられますが、集客が難しくなる可能性があります。
立地 |
人通り |
賃料 |
---|---|---|
繁華街・商店街 |
◎ |
高い |
住宅街 |
△ |
低い |
ターゲット客層によっても適した立地は変わってきます。例えば、OL向けサロンなら駅チカが好ましく、主婦層向けなら住宅街が適しているでしょう。また、サロンの雰囲気やサービス内容によっても、落ち着いた路面店がよいか、ビルの一室がよいかが変わります。
このように、人通りの多さと集客力のバランスを考えながら、ターゲット客層に合った最適な立地を選ぶことが重要になります。
ターゲットに合った立地を選ぶ
サロンの立地は集客力に大きな影響を与えます。ターゲット客層に合わせて立地を選ぶことが重要です。
例えば、以下のようにターゲットに応じた立地を選ぶとよいでしょう。
ターゲット層 |
適した立地 |
---|---|
主婦層 |
住宅街、駅チカ |
OL・会社員 |
オフィス街、駅前 |
学生 |
大学・専門学校の近く |
シニア層 |
住宅街、高齢者施設の近隣 |
駅からの徒歩圏内に立地することで、より幅広い客層の集客が見込めます。ただし、家賃が高くつく傾向にあります。一方、住宅街に立地すれば賃料は抑えられますが、客足が遠のく恐れがあります。
このように、ターゲット客層の生活圏や行動パターンを考慮し、アクセスのよい立地を選ぶことが大切です。周辺の人口動態や競合状況なども加味して、総合的に判断することが求められます。
賃料相場と開業費用のバランスを見極める
賃料は立地によって大きく異なります。都心部や人通りの多い商業地域は、それだけ家賃も高くなる傾向にあります。一方で、郊外の住宅街は家賃が比較的安価です。
開業費用全体の中で賃料が占める割合を検討する必要があります。一般的な目安として、月額賃料は開業費用の20%以内に抑えることが望ましいとされています。
開業費用 |
月額賃料の目安 |
---|---|
1,000万円 |
20万円以内 |
1,500万円 |
30万円以内 |
2,000万円 |
40万円以内 |
この目安を超えると、利益を残すのが難しくなります。賃料が高すぎると開業資金が枯渇し、倒産に直結するリスクがあります。立地の良さと賃料のバランスを見極め、無理のない範囲で物件を選ぶことが重要です。
4.物件探しのポイント
物件の種類(路面・ビル・住宅兼用等)
サロン物件には主に以下の3種類があります。
種類 |
特徴 |
---|---|
路面店舗 |
道路に面した物件で、通行人の目に留まりやすい。賃料が高めの傾向。 |
ビルテナント |
商業ビルやマンションの一室を賃借する形式。マンションは管理組合の承認が別途必要。 |
住宅兼用 |
一戸建てやマンションの一部を改装してサロンとする。プライバシーが確保しやすい。 |
路面店舗は視認性が高く集客がしやすい一方、家賃が高額になる傾向があります。ビルテナントは家賃が比較的安価ですが、周辺の人通りが少ない立地では集客が難しくなります。
住宅兼用は自宅の一部を改装するため、低コストで開業できる利点があります。ただし、プライバシーと業務の切り分けが難しい面もあります。
サロンのコンセプトやターゲット層に合わせて、物件の種類を検討することが重要です。
広さと間取り、設備状況
サロンの広さは、提供するサービスの内容やスタッフ人数によって異なります。一般的には以下の目安があります。
サロンの種類 |
広さの目安 |
---|---|
美容室 |
15〜30坪 |
エステサロン |
10〜40坪 |
ネイルサロン |
10〜20坪 |
間取りは、プライバシーが確保できるよう個室の数と広さに注目しましょう。また、受付カウンターや待合スペース、スタッフ控え室なども必要です。
設備面では、サロンの業態に合わせて、シャンプー設備や施術ベッド、ネイル機材など、必要な設備を確認しましょう。 また、換気扇や空調設備、防水パン、給排水設備の状況なども重要なポイントです。
周辺環境(交通・駐車場・治安等)
サロン開業時の立地選定では、交通の便やお客様の駐車場の有無、治安面も重要なチェックポイントです。
まず、公共交通機関の利便性を確認しましょう。最寄り駅から徒歩6分程度が目安ですが、お客様の年齢層次第では多少余裕を持たせる必要があります。バス路線の本数なども事前に調べておくと良いでしょう。
交通アクセス |
目安 |
---|---|
最寄り駅からの徒歩分数 |
6分程度(ターミナル駅は10分) |
バス路線の本数 |
20分に1本以上が望ましい |
次に、お客様の駐車場スペースの確保です。近隣にコインパーキングがあれば良いですが、スペースが不足する場合は月極駐車場の契約を検討する必要があります。
最後に、夜間の治安面も見落とせません。防犯カメラの設置状況や、周辺の街灯の明るさなども確認しておきましょう。
立地選定は、サロン経営の成否を大きく左右する重要な要素です。交通アクセス、駐車場、治安面など、あらゆる角度からの入念な調査が不可欠となります。
5.立地調査と複数候補の検討
開業予定エリアの実地調査
サロン開業を成功に導くには、事前の立地調査が欠かせません。実際に開業を予定しているエリアを訪れ、様々な視点から調査を行うことが重要です。
-
人通りの多さ
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平日と休日の時間帯別に人通りを確認します。
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目安として、1時間当たりの人通りを観察すると良いでしょう。
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-
駐車場の有無と利便性
-
来店客の駐車場があることが望ましいでしょう。
-
近隣の有料駐車場の料金や満車状況も確認しましょう。
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-
競合店の状況
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同業種や類似業態の店舗数と営業時間を確認します。
-
競合店の客足や集客力を見極めることも大切です。
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-
周辺の環境
-
買い物施設や目的地の有無で人の流れを把握します。
-
治安や騒音など、立地環境も事前に確認しましょう。
-
実地調査では、様々な視点から開業予定エリアを丹念に見極めることが重要です。複数の候補地を比較検討し、ターゲットにマッチした立地を選びましょう。
複数の物件候補を比較検討
あらかじめ開業予定エリアで複数の物件を絞り込んでおくことが重要です。立地条件が似通った物件同士を比較検討することで、より良い選択ができるからです。
比較検討ポイントは以下の通りです。
項目 |
ポイント |
---|---|
賃料 |
サロンの予算内で収まるか |
広さ・間取り |
理想の広さ・レイアウトか |
設備状況 |
内外装のリフォーム費用は |
周辺環境 |
駐車場や交通アクセスは |
視認性 |
通行人への目線は確保できるか |
実際に内見して雰囲気を肌で感じることをおすすめします。現地を確認しないと分からない部分があるためです。
候補物件それぞれの長所・短所を明確にし、総合的に最適な物件を見極めることが大切です。納得のいく物件に出会えるまで、じっくり検討を重ねましょう。
内見時のチェックポイント
物件の実際の雰囲気を肌で感じ、細部までチェックすることが重要です。以下のポイントを押さえましょう。
-
採光や通風の良さ 窓の位置や大きさ、開閉の仕方など。明るく風通しの良い空間かを確認しましょう。
-
水回りの状況
ミニキッチン・洗面・トイレの設備(あれば)の老朽度や水漏れの有無を確認します。※スケルトン物件だとない場合がほとんどです。
項目 |
チェックポイント |
---|---|
ミニキッチン |
給排水管の状態とサイズ、ガス栓の位置と容量 |
手洗い場 |
洗面台のサイズ、鏡の大きさ |
トイレ |
シャワートイレか、換気扇の音 |
-
電気容量と配線
サロン運営に十分な電気容量があるか、コンセントの数と配置を確認しましょう。 -
防音対策の状況
近隣への音漏れ対策が適切にされているかをチェックします。
このように、実際に物件を見て様々な角度から検討することが大切です。
6.物件契約と開業準備
契約手続きの流れ
物件が決まれば、次は賃貸借契約の手続きです。一般的な流れは以下の通りです。
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申込み
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物件の内覧と条件の確認
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必要書類(住民票、印鑑証明書、決算書類など)の準備
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申込書の提出
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審査
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保証会社および大家側による審査(支払い能力、事業内容など)
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契約
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契約内容の確認(契約期間、賃料、敷金・礼金など)
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契約金(前賃料・共益費、敷金・礼金、初回保証料等の支払い)
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契約書への記入・押印
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引渡し
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鍵の引渡し
-
入居日の確認
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契約時に必要な主な費用は以下の通りです。
費用 |
概要 |
---|---|
賃料 |
月額の家賃 |
共益費 |
共用部分の維持管理費用 |
敷金 |
退去時の原状回復費用 |
礼金 |
大家への一時金(新規のみ) |
初回保証料 |
保証会社への保証料 |
各種書類の準備と確実な手続きが重要です。分からない点は業者や専門家に相談しましょう。
内装工事と備品調達
物件が決まれば、次はサロン内の設計と内装工事の準備です。開業までの期間は限られているので、早めに業者を選定し工程を立てましょう。
一般的なサロンの内装工事の流れは以下の通りです。
-
内装設計・見積り
-
確認申請(必要な場合)
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解体・防音工事
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電気・給排水工事
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内装工事(クロス・フロア等)
-
備品搬入・最終清掃
内装工事の際は、店舗デザインに加え、レセプション・待合所・セット面・シャンプー台の配置など動線の確保が重要です。また、防音対策も忘れずに行いましょう。
工事と並行して、備品の発注と搬入の準備も必要です。主な備品は以下の通りです。
項目 |
主な備品 |
---|---|
カウンター周り |
ドライヤー、ミラー、シャンプー台など |
客席 |
椅子、ワゴン、マジック、ヒーターなど |
バックヤード |
作業台、薬剤ワゴン、洗面台など |
その他 |
レジ、受付カウンター、什器など |
備品は入念にリストアップし、必要な数量を確認しましょう。内装工事の進捗に合わせて、段階的に発注するのがベストです。
集客につながるHPやSNSの開設
開業に向けた物件決定後は、サロンの存在をお客様に広く知ってもらう必要があります。そのための最も重要なツールがホームページとSNSです。
ホームページは、サロンの概要やメニュー、スタッフ紹介など基本的な情報を網羅し、検索エンジン対策も行いましょう。デザインは独自性があり、サロンのコンセプトが伝わるものが望ましいでしょう。
ホームページに掲載する主な項目 |
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サロンコンセプト |
メニューと料金 |
スタッフ紹介 |
アクセス方法 |
ブログ |
一方、SNSは即時性と双方向のコミュニケーションが魅力です。Instagramなどで施術の様子や新メニュー情報を発信し、お客様とのつながりを深めましょう。
開業前から情報発信を開始し、オープン時にはある程度の認知を得ておくことが重要です。ホームページとSNSを効果的に組み合わせ、サロンの魅力を存分にアピールしましょう。
7.まとめ
サロン開業に向けた物件選びは、成功のカギを握る重要な過程です。まずはサロンのコンセプトやターゲット客層を明確にし、そこから立地の条件を絞り込むことが大切です。
開業予定エリアの実地調査を行い、以下の点を意識しながら複数の物件を比較検討しましょう。
物件の種類 |
路面・ビル・住宅兼用など |
---|---|
広さと間取り |
十分な広さと動線を確保 |
設備状況 |
水回り・空調などが整っているか |
周辺環境 |
交通・駐車場・治安面など |
内見時には細かく状況を確認し、賃料相場や内装工事費も見積もって開業費用とのバランスを考えましょう。
物件決定後は、契約手続きを経て内装工事と備品調達を進め、HP・SNSを開設して集客につなげていきます。慎重な物件選びが、理想のサロン開業を実現する第一歩となります。
美容室・サロンの物件探しの相談
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